「その瞬間に向かって」
ジム・プリマス

地の時代の闇が世界を覆っている
飢えて寒く凍える肉体と精神
厚い雲に遮られて
天球の恒星の光すら届かない
暗くて闇に慣れた目でも
自分の手のひらさえ見えない

さっきから聞こえるのは
子供がすすり泣く声
傍らに寄り添うことも出来ない
この闇は永遠に続くのか
諦めが精神に広がる
砂を噛むような焦燥感に
精神が乾いて凍てついてゆく

だが諦めてはいない
俺にはただ一つだけ残された
確信がある
風の時代は必ず訪れる
夜明け前が最も暗い
現在は風の時代の黎明だ

闇は解け
紫の雲がたなびき
やがて黄金色の朝日が
その閃光が射すだろう
その時、再び身体は
熱を取り戻すだろう

そして俺は知る
目の前に広がる
殺伐とした荒野の真ん中に開けた
大きな道の上に
自分が立っていることを

風の時代の夜明けの風が
立ち枯れた木立ちを揺らし
柔らかく俺の頬を撫でる

俺が足を一歩踏み出すと
頭上の天球と足元の地球が
一緒に回転する

その刹那
俺はいつも身近に感じていた
天球と地球から響いてくる
その波動を取り戻すだろう

そして
俺の精神は身体の外側の
全方位に向かって
魂の歌を歌うだろう

俺は生きよう
その瞬間に向かって


自由詩 「その瞬間に向かって」 Copyright ジム・プリマス 2022-12-03 20:00:27縦
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