盗賊ヨランとアイソニアの騎士(一)
朧月夜

そのころ盗賊ヨランとアイソニアの騎士は、
次元跳躍をして、アースランテのアイソニアの騎士邸へと辿り着いていた。
「イリアス! 俺のイリアスは無事なのか?」
「お待ちください。ナディ邸まで行ってみましょう、騎士様」

ヨランは、逸るアイソニアの騎士を必死で宥めながら言った。
「おのれ、クールラント! 祖国だと言っても、俺は決して許さん!」
それに対して、盗賊ヨランは冷静だった。「騎士様。
 悪いのは祭祀クーラスです。クールラントが悪いわけでは、ございません。

「そうだな。そうだった。しかし、クーラス、俺の妻を盗もうなどと!」
「あなたを敵に回したのは、祭祀クーラスにとっては失敗だったかもしれませんね。
 彼は今後ずっと、あなたの報復におびえることでしょう」
 
「ヨラン。イリアスの家へ急ぐぞ! 支度をしろ」アイソニアの騎士が叫ぶ。
「騎士様。支度と言っても、わたしは身一つでございます。
 必要なものは、すべて背嚢のなかに入ってございます」ヨランがそっけなく答えた。


自由詩 盗賊ヨランとアイソニアの騎士(一) Copyright 朧月夜 2022-11-28 21:34:39
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