女學生日記 四十
TAT


十一月十七日 金曜
天氣 曇
起床 六時〇分
就床 十時〇分

朝礼運動場
ラヂオ体操
習字は清書をしました
理科は消化器のお話で試驗に出るらしい
とてもくどく何度も仰言やつたからです
放課後は教室のお掃除で課外運動は歩行で善光寺まで行きました
夜は先生の今まで仰言つたことを箇條書にしました
理想の女學生にならんがためにです



十一月十八日 土曜
天氣 晴
起床 五時二〇分

昨夜のきまりでは起床時間は五時であるがどうしても起きられなかつた
でも三十分も早く起きる事が出来て嬉しい
段々そのきまりに近附いて行きたいと思ひます
朝學校へ行く前に勉强した
學校へ行つてからは裁縫をやりました
家に歸つてからズロ|ス・靴下・ハンケチ・衿カバ|・風呂敷を洗ひました
又母にボ|ル箱を二つ貰つて一つは靴下の箱もう一つは洗濯物を入れる箱にしました



十一月十九日 日曜
天氣 晴
起床 六時二〇分
就床 九時三〇分

晝前大掃除をしました
妹達は寫生大會に出て行つたので家の中は大へん静かである
晝からハイキングもかねて父の魚つりにお供をした
柿やお菓子をス|ツケ|スに一杯つめて妹と二人父の自轉車に乘せてゐたゞいたり歩いたりして川へついた
私は川へ入らなかつた
池を作つたりメダカをすくつたりして遊んだ
父は釣れる度毎に「ホラ釣れた」「又釣れた」等と言はれるのでその度に向うを見ると白い魚がピチ〳〵はねながら引きよせられて来て父の腰に下げた籠の中へをさまる
全部で二十匹位つれた様だつた
三時に川原を出發して四時家についた
夜食はそのお魚を煮て食べた
とてもおいしかつた
今日は本當に樂しかつた



十一月二十日 月曜
天氣 曇
起床 五時〇分
就床 十時三〇分

朝早く行つて裁縫を致しました
朝礼教室で吉田先生より御注意をうけたまはりました
二限は修身で「青少年學徒」「賜ハリタル勅語」を謹寫するのでしたが遺骨迎へに行きました
今月は味噌汁當番で体操當番でした
放課後は裁縫室の大掃除でした
夜はカ|ドを作りました



十一月二十一日 火曜
天氣 晴
起床 六時六分
就床 十時三〇分

今日は図画の時間に園藝を致しました
裁縫は東西一緒でウエストの原型の試驗がありました
四十分の短縮授業で晝から体力章檢定の試驗があつた
今日菊が貰へる筈だつたのが貰へなかつた
とても遲くなつた
今日劇の練習があつた
私は説明者です
小城さんが威張つて學藝部の外の方達は眼中に無いやうに振舞つて居られるのがとても厭な気がしました



十一月二十二日 水曜
天氣 雨
起床 五時〇分
就床 十時三七分

朝礼講堂
奥田先生より御注意
一・千人針は責任を以て引受けること
二・千人針は自分の代りに戰地へ行くのだと思つて心を込めて結ぶこと
今日四時・五時間目の町葬は東組の方だけでした(雨降りの爲)今日生理の本を忘れました
普通掃除で裁縫室を致しました
六限は國語で書取りを致しました



十一月二十三日 木曜
天氣 晴
起床 六時三〇分
就床 九時〇分

晝前二階の大掃除をして勉强した
お晝から學校へピアノを練習しに行つた
今日兄さんが眞桑へ行かれたので傘を持つて驛へ迎へに行つた
柿をとてもたくさん下さつた
夜さつそく食べた
とてもおいしい
ホツペタが落ちさうだつた
今日は新嘗祭で學校はお休みでした



十一月二十四日 金曜
天氣 晴
起床 五時四〇分
就床 十時三七分

放課後は四年・一年の方の體力テストで私達は作法室で劇の練習をした



十一月二十五日 土曜
天氣 晴
起床 五時三〇分
就床 十時二〇分

朝兄さんが學校へ行かれた頃 眞桑から電話がかゝつて來て「お祖母さんが肺炎だ」と云ふことで母はあはてゝ行かれた
昨後日兄さんが行かれた時は風邪で寢てゐらつしやつたさうだが心配だ
祖父の家はお百姓と柿作りをやつて見えるので今が一番忙しい時なのに本當に大變だと思つた
今日の補欠は地理で習字は無かつた
放課後は劇の練習があつた
今日家に歸つたら私の従弟の此の間戰地から歸つてゐらした許りの義則さんが來て見えた
夜は戰地のお話などを聞いた



十一月二十六日 日曜
天氣 晴
起床 六時三〇分
就床 九時三一分

朝學校へ劇の練習に行つた
十時半ごろ歸つた
お晝から妹達と横手でドツチボ|ルをして遊んだ
二時頃義則さんが歸られた


散文(批評随筆小説等) 女學生日記 四十 Copyright TAT 2022-11-26 22:30:49
notebook Home 戻る  過去 未来