女學生日記 三十五
TAT

十月八日 日曜
天氣 晴
起床 六時十七分
就床 十時〇分

今日は家の清潔で疊を出したりたゝいたりしてとても忙しかつた
お晝前にやうやく濟んだのでお晝から篠塚さんと妹・真ちやん等と田圃の方へ蝗を捕りに行つた
途中で真ちやんが川へ落ちたので大へんでした
とても多くさん取れた
夜 篠塚さんと一緒に勉强した



十月九日 月曜
天氣 晴
起床 五時十七分
就床 十時三七分

朝礼教室
吉田先生より御注意があつた
島先生からも御注意がありました

夜は更けて行く 時は段々流れて行く 私はその一時静かに讀書に耽つてゐた 夜はどこまでもしん〳〵と更けて行く 讀書につかれた私は何氣なく窓邊によつて戸を明けた うら寒い風が音もなく過ぎて行く 月はつめたく光を放つてゐる 星も寒さうにふるへてゐる 夜はすべてのものが冷たく淋しい
なんだか泣きたくなつて侘しい氣がした



十月十日 火曜
天氣 晴
起床 五時三七分
就床 十時三九分

朝礼運動場でラヂオ体操は無く行進を致しました
一限國語 四限図画と入れ替りました
課外運動は二十一日のマスゲ|ムの時にする運動をしました
今日熊田でペン先を買つた

小さな雀
雀の色は焦茶です
少し寂しみをおびてはゐるがそれが何時も動いてゐるのですから面白い
雀の頭の圓い事と云つたら有りません
怒つた時でも鳴く時でもいつでも圓い
縦からでも横からでもどうして見てもやつぱり圓い
(泉ヨシ子)



十月十一日 水曜
天氣 晴
起床 六時〇分
就床 十時三七分

朝礼運動場で昨日のやうに行進をした
放課後の學習は数學でしたが自習でした
今日家に歸つてからすぐお辨當箱を洗つてお鍋お櫃を洗つた
それから御飯を焚いて食事の用意をした
それからかめに水を一杯汲んで居いた
お風呂の加減を見てお風呂の火を焚いた
食事後片附けてから今度は妹達のおすしを作つた
色々仕事して母に賞められた



十月十二日 木曜
天氣 雨
起床 六時〇分
就床 十時十二分

今日運動場
行進の練習をする
お晝休ピアノを見て頂く
放課後の學習は英習字でした
三田さんは注意をして上げるととてもおこつて意地によけいなさいます
又今日は廊下でこそ〳〵話をして見えました
そして自分から「井戸端會議が始まつたよ」と云つて見えました



十月十三日 金曜
天氣 晴
起床 六時〇分
就床 十時二七分

朝礼運動場
行進の練習
一限修身 五限文法になりました
文法は自習でした
理科は園藝をして芝を植へました
放課後の運動は体操の練習をしました
今日放課後「大地」を貸りた



十月十四日 土曜
天氣 晴
起床 五時三七分
就床 十時二七分

朝礼運動場
何時もの如く行進の練習
今日のお辨當はお漬物です
吉田先生より注意をうけたまはりました
一・口をつゝしむ事
二・人の悪口を云はぬ事
後 組長 副組長の政選がありました
放課後運動があつて行進して体操を練習しました
今朝早く行つて校庭のお掃除をしました
氣持が好かつた



十月十五日 日曜
天氣 曇
起床 六時二七分
就床 九時三七分

朝の中に色々勉强して居いた
母の髪をといて上げたので賞められて嬉しかつた
晝から篠塚さんや篠塚さんの姉さん達と田圃の方へ蝗を取りに行つた
とても多くさん取れた
今日は関校の運動會である
夜もう一つ袋をつくつて蝗が窮屈だらうと思つて二つに分けて居いた



十月十六日 月曜
天氣 雨
起床 五時三七分
就床 十時二九分

朝礼教室
吉田先生より御注意
一・人には誠を以て接する事
二・口をつゝしむ事
一週間の反省
此の週間は大体守れたと思ふがまだ本當ではない
お友達に注意して上げる時そのお友達がおこつたりなさると私は自分の心が解らないのかと思つて自分を反省しないですぐおこる
今日先生のお話を聞いてそれでは不可ないと思ひ此れから改めやうと心にちかつた


散文(批評随筆小説等) 女學生日記 三十五 Copyright TAT 2022-10-16 18:39:31縦
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