still
塔野夏子

それでも身体は
どこまでもこわれゆくこぼれゆく
ものでしかなかった
だからせめて
心と呼ばれるものを
身体のすみずみまでしみわたらせて

身体のそとに
しるしを刻んでゆく いくつも
いくつも それがたしかなしるしなのか
脆く消えてしまうしるしなのか
知らないままに

光る術を持たない身体は
少しでも光に似たものを
放とうとしながら
こわれゆきこぼれゆきながら
どこまでも
ふるえながら

その刹那刹那のしるしが
遠く近く 波紋することを
祈りながら 誰かの波紋に
またふるえながら

光に似たものがあつまって
光に変わるかもしれない処へ
どこまでもこわれゆくこぼれゆくまま
少しずつ近づこうとするのだった





自由詩 still Copyright 塔野夏子 2022-10-01 13:35:21
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