女學生日記 三十三
TAT

九月十九日 火曜
天氣 晴
起床 五時三〇分
就床 九時五〇分

図畫は南瓜の繪を出しました
寢冷したので鼻がつまつて聲がふが〳〵として音樂の時とても困つた
放課後の運動は栗田さんと一緒に見學しました
家に歸つたら本巢の叔父さんから立派な梨を一箱も送つて下さつて居た
早速御ちそうになる
とてもおいしいホツペタが落ちる位でした



九月二十日 水曜
天氣 曇
起床 五時五〇分
就床 九時十七分

今日は少し熱があつて起きにくいので長く寢ていた
國語は書取りでした
体操は見學しました
理科は昆虫採集の入賞者を定めました
篠塚さんと須藤さん窪さんでした
學習は國語でした
が体力テストの事で自習でした
今日お晝休みに消火器がスカ|トの紋に引掛つてシユ|とでたので大へんびつくりした
四年の南部さんと云ふ人と小田さんと云ふ方が色々仕末してくださいましたので私は大へん嬉しかつた
夜習字をした



九月二十一日 木曜
天氣 雨
起床 五時二〇分
就床 九時三〇分

今日はピアノを檢閱してゐただく日なので朝早く行つて練習しました
お晝御飯の時 吉田先生より御注意がありました
一・電車汽車の中で座席の取り合ひをせぬ事
二・こそ〳〵話をしない事
三・反省日記を詳しく書く事
お晝ピアノを見ていただきました
「日本ヨイ國」を返しました



九月二十二日 金曜
天氣 晴
起床 五時五〇分
就床 九時三〇分

朝礼講堂
奥田先生より御注意
一・敬礼(先生に對して)(同輩に對して)
二・ごみ・糸くづ・かみくづの仕末の仕方について
三・左側通行について
習字はお清書しました
放課後 薙刀を習ひました
今日 書方・裁縫・図畫・昆虫採集標本の展覧會がありました



九月二十三日 土曜
天氣 晴
起床 五時三〇分
就床 九時十七分

一限音樂になつた
吉田先生より「孝行すること」について御話があつた
英語は二限になつた
お晝吉田先生がゐらつしやらぬので島先生でした
先生が「皆が見てるから僕はおちよぼ口をして食べる」と言つてへんな口で食べられたので面白かつた
其の時 島先生より注意
一・物が失へるから氣をつけること



九月二十四日 日曜
天氣 晴
起床 六時二〇分
就床 九時十九分

朝何時もより遲く起きた
二階の大掃除をして勉强をした
晝から妹と篠塚さんと三人 善光寺へお參りに行つた
山傳ひに不動公園へ下りて歸つた
夜お風呂へ入つた
母は隣の小母さんと善光寺へ行かれた



九月二十五日 月曜
天氣 晴
起床 五時五〇分
就床 十時〇分

朝礼教室
吉田先生がゐらつしやらないので島先生より御注意
一・忘れ物をしないこと
二・物の失ふといふ事の無いやうに
三・組全体として注意を受ける時の心得
理科は園藝をして賞められた
体操と作文が入れかはりました
小城さんが「今日は選擧だから二時間授業だ」と言はれたが違つてゐた
今度は今田さんが「四時間授業だ」と言はれたが違つてゐた
今朝本巢の西の叔父さんが早くゐらつしやつた
又とてもたくさん〳〵立派な梨を持つて来て下さつた
あまりたくさんで食べられぬ位なので他家へお配りした



九月二十六日 火曜
天氣 晴
起床 五時三〇分
就床 十時二七分

今日は体操當番なので朝早く行つた
数學は一限になつて考査でした
放課後は教室のお掃除でした
夕方 雷が鳴つて雨が降つた



九月二十七日 水曜
天氣 晴
起床 五時五七分
就床 十時三〇分

今朝はおはてがんで佛さまにお團子をお供へした
体操は号令當番でした
理科の本と修身の本と同じ紙で包んであるので今日も忘れ物をした
作法は教室で此の前の宿題の答を習ひました
課外は國語でア・イ・ウの書取りでした
夜お使ひに妹と行つた
今日は仲秋の明月で芋明月とも云ふ



九月二十八日 木曜
天氣 晴
起床 五時二七分
就床 十時三〇分

今日晝前に五限やつて午後から映寫會でした
一・製鉄の話(學習用として參考になる)
二・北海道地方(地理學習用として好い)
三・木下藤吉郎(面白い)藤吉郎は猿面だと聞いてゐたが顔は丸かつた
四・護國の母(杉野兵曹長の妻 柳子が三人の子をどんなに苦心して育てたかと云ふ事と母の愛といふ物をひし〳〵と身に感じる映画であつた)



九月二十九日 金曜
天氣 曇
起床 五時三〇分
就床 九時五七分

修身の時「青少年學徒に賜ハリタル勅語」を暗誦した
放課後のお掃除は裁縫室でした
今日東組の武岡さんと裁縫當番でした
下校過ぎてから小宮さん達と歸りました


散文(批評随筆小説等) 女學生日記 三十三 Copyright TAT 2022-10-01 08:11:47
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