甘い息
秋葉竹




夜の街には、風が吹き
不幸な人を選びます。

不幸な人の吐く息は
切ないほどの甘さです。

その唇はやわらかく
そっと触れたらぷにぷにで
どんな小さな喜びも
そっと語ってくれるのです。

その夜も風は逢いました。

彼女はそれを知りながら
微かに顔をそむけても
そんなちいさなあらがいは
なんのやくにも立たなくて
風はやさしく口づけます。

(月は目を閉じ、みないふり)

夜の街には、風が吹き
不幸な人を選びます。
風はやさしく撫でながら
ゆっくりこころをくるむのです。







自由詩 甘い息 Copyright 秋葉竹 2022-09-30 07:26:57
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