女學生日記 三十二
TAT


九月十二日 火曜
天氣 晴
起床 五時三〇分
就床 八時二七分

朝礼の時 校長先生奥田先生より「今日から薙刀を習ふ」事についてお話がありました
お晝休みに通學靴と運動靴とを持つて運動場で檢査を受けました
お晝休みに記章を買ひました
放課後の運動は三年生が薙刀であとは各部に別れて運動をしました
今日圖書室で「綴方教室・豊田正子」を借りて歸つた



九月十三日 水曜
天氣 晴
起床 五時十二分
就床 九時二七分

理科は昆虫の名をつけました
作法は着物や袴のたゝみ方を習ひました
朝礼の時 運動靴の記名檢査がありました
五限後校庭のお掃除をして六限は数學でしたが自習でした
体操當番でしたので西組の人だけで片付けて歸りました
父はてんからに行つて六十六匹釣つていらつしやいました



九月十四日 木曜
天氣 晴
起床 五時三〇分
就床 九時五〇分

朝早く行つてピアノを練習した
放課後の運動は各部に分かれて致しました
お晝休ピアノを検えつして戴きました
放課後下校時間までピアノを練習しました
今日英語のノ|トを買ひました
夜お風呂へ入つてから勉强した



九月十五日 金曜
天氣 雨
起床 六時〇分
就床 十時二七分

今朝は少しお寝坊をしてしまつた
學校へ行つた時 門の側で大きな山まゆの蛾を捕へた
上條さんに展翅させていたゞいた
少しやぶれてゐるので惜しかつた
体操は講堂でした
修身は勅語の諳書をしました
放課後の課外は薙刀をしました
仲々難しかつた
夜 昌ちゃんが遊びに来て大へん面白かつた



九月十六日 土曜
天氣 曇
起床 五時二〇分
就床 九時十七分

朝礼講堂
奥田先生より
一・室内の礼 二・外の礼 三・早く集合することについて注意がある
花村先生より
便所の整理整頓について御注意がある
今日私が裁縫室から歸つて来ると東組のある方が私の机の中をさがして一番下にある数學のノ|トを持って行つて見て机の中はくちや〳〵でノ|トは腰掛の上にほつてありました
そしてお晝休がすんでも何とも云つてらつしやいませんでした
私は大へんいやでした
西組のお友達に聞いても「何も知らない」とおつしやいますので私は勇気を出して(大ていわかつてゐたので)聞いたらその方と解りました
今まで何辺すれちがつたのかわからないのにだまつてみえた人 私は本當にいやでした
誰も居ない時に外の組の教室に入つてことわらないで人の机を開けノ|トを出して見てそして知らぬ顔であやまりもしない其の人の態度に私は本當におこりました
口惜しくてならなかつた
泣く位だつた

※人の振り見て我が振り直せ



九月十七日 日曜
天氣 雨
起床 六時〇分
就床 十時三〇分

母が頭が痛いと云つて見えたので私は先に起きてお勝手の用をした
晝前勉强した
晝から母達と蝗を取りに行く筈だつたが天気が危かつたので止めました
四時頃大雨が降つて一年の土居さんともう一人の人が走つてゐらつしやいましたので家の中へ入れて上げて午後五時頃 河みたいになつた表の道をジヤブ〳〵と歸られた
夜おそくまで電氣がつかなかつた



九月十八日 月曜
天氣 雨
起床 五時二〇分
就床 九時三〇分

朝礼は教室で吉田先生より御話がありました
一・一週間の自分の行ひ(四ツの實行問題)について反省する事
作法は「勤勞作業」と云ふ題で作文を書いた
今日始めて裏の柿の木になつた柿をたべた
とても〳〵おいしかつた


散文(批評随筆小説等) 女學生日記 三十二 Copyright TAT 2022-09-20 20:07:32
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