音楽と君
ひだかたけし

波打ち際で戯れる子供たち
一時を美しく花開く少女たち
燃え上がり離れていく男女は独り

レンブラントの母の像
老いた女の静かな炎
老いた女の確かな実在

私の顔に
浮き始めた染みの点々
病んで窪んだ眼窩
雑草のように増殖する白髪

  *

移り変わる生の過程を踏みながら
君は何を眼差すのか

なにを まなざす のか

君は人生の境界にいる
まだ自然に輝く美しさを保ちながら
部屋のカーテンを閉ざし
暗闇にひたすら眼を閉じ横たわる休日
立ち上がる気力を失って
生きる気力を失って

この世界に底は無い
底無しの底へ落ちて舞い上がる
蠢く闇を背負い
たましいの声に聴き入れば

  *

幾何学模様のループを描きながら
透き通った歌声が残響する
持続する旋律とビートに
底無しのこの世界を
呪いながら讃えながら
落ちていく、舞い上がる

一瞬に開示される永遠を
鮮明に脳髄に響かせながら

落ちていく、舞い上がる
















自由詩 音楽と君 Copyright ひだかたけし 2022-09-20 19:12:47
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