ハーレスケイドでの戦い(十二)
おぼろん

しかし、そんな憂いとは別に、アイソニアの騎士は、
ヨランの肩を軽く叩いて言った。「そんなに消沈するな、盗賊。
 お前が活躍する機会は、これからいくらでもあるぞ?」と。
そして、呵々として笑う。

ヨランは迷っていた、今の何気ない会話が、
本当に彼らの今後に影響しないのか、──と。
彼は、思っていたのである。「魔術とは一種の言語ではないのか?」と。
(もしも、魔術が言語であれば、「言語崩壊」の影響を受けているはずだ……)

「さて。我らは先を急ごうぞ、盗賊。そして、エイミノア」
「そうですね、騎士様。冒険とはつねに危険が伴うものです。
 先ほどの攻撃に対する損傷が軽微であって、安心しました」

アイソニアの騎士とエイミノアがそんなふうに会話するのを、ヨラン、
そしてオーマルは横目で見ていた。「彼らは、世界を託すに足る存在だろうか?」
──オーマル、そして、彼女の影なる存在である、ある男は呟いた。


自由詩 ハーレスケイドでの戦い(十二) Copyright おぼろん 2022-09-13 21:21:25
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