ハーレスケイドでの戦い(十一)
朧月夜

(もっと慎重を期しておくべきだった)と、ヨランは思う。
この世界ヨースマルテにおいては、魔術とは、それが秘匿されているがゆえにこそ、
一定の理解を得られているのである、と。
(もしも魔術が暴走したならば……第二の「言語崩壊」が起きる!)

そんな恐れが、今のヨランを掴み、離さずにいた。
だが、恐れを知らない者とは、気楽な者である。
アイソニアの騎士は、オークのエイミノアとともに、
先ほどの戦いについて、談笑していた。

「ハーレスケイド、恐るるに足らず、ですな」と、エイミノア。
「俺もどんな世界かと思ったが、案外大したことないではないか!」と、アイソニアの騎士が笑う。
(大したこと、あるのですよ)と、ヨランは思う。

(わたしには魔術が使えない。それにも関わらず、魔術を使ってしまった……
 ──これはすなわち、世界の理を壊すということです。わたしたちは、
「ヒアシム・カイン」を使ったエインスベル様と同様、世界から呪われた存在となったのです……)


自由詩 ハーレスケイドでの戦い(十一) Copyright 朧月夜 2022-09-13 21:20:47
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