いま完成した
この僕の絵は

いつまでも若いままだ

9月のこの日よりも
年を取る事はないだろう

もし
僕の代わりにこの絵が
年を取ってくれるなら

そのためには
僕の魂をも捧げます

ああ
年を取ったら
自殺しよう

と
美少年は泣きぬれる


君は
あの肖像画に
嫉妬してるんだ

と
画家は叫ぶ

僕には
若さという
失うものがあるというのに

なぜ
あの肖像画には
失うものがないんだ

こんなに残酷なものを
なんで描いたんだ

と
美少年は
画家を責めたてる

わかった
それならこわしてやる

と
画家は
絵を切り裂こうとする

やめて
お願いだからやめてくれ
それは殺人になる

と
美少年が画家をとめると

それじゃあ
私の仕事に感謝するのかい

と
画家は問う

もちろん
評価するよ

僕の一部といってもいい

と
美少年は
切ない表情で答える


出来上がったばかりの
絵画や写真にむかって

何かを祈ったり

また
願ったりしてはならない

この時
ほんのわずかな時間だけ
すぐれた絵画や写真を選び

永遠の命をふき込むために

精霊の国から
精霊たちがやってくる

この世と
精霊の国とがつながっている
ほんのひと時

助けられた恩返しにと
絵の精霊は

美少年の願いを
聞き届けるのだが

その結末は
あまりにもむごいものだった


ある日
数十年がたっても
美少年は変わりなく若いので

その秘密や
秘訣を教えてくれと
友人にせがまれる

ふと
美少年は忘れていた
あの絵の事を思い出す

隠しておいたその絵の
布のベールを取り去って

ランプで照らすと
そこには

無残に年老いた
自分の姿があった

愕然として我をわすれ

狂ったようにその絵に
ナイフをつきたてる

次の瞬間
驚くべき事が起こった


絵の老人と美少年が一瞬に入れ替わり


絵には若い美少年が戻り


床には胸にナイフが刺さった


醜い老人が横たわり死んでいた