女學生日記 三十
TAT

八月二十一日 月曜
天氣 曇
起床 五時五分
就床 八時二〇分

朝 學校へ行つてお友達の後藤たか子さんと西田しげさんのお父さんが亡くなられたと聞いてびつくりしました
今日は作業は無しで今日の園藝當番と見學の方と園藝部の方は中野先生のお指図で園藝 それ以外の者は運動と大掃除でした
運動は大へんえらくて頭が痛くなつた
家に歸つて裏で大きな烏蝶を捕へました
嬉しくて展翅してから皆に見せた
三時頃頭が痛くなつて寢ました



八月二十二日 火曜
天氣 晴
起床 六時二〇分
就床 八時三五分

朝少し雨が降つてゐたが後止んで日本晴になつた
熱があつて頭が痛いので藥を飲んで寢てゐた
夕方大分好くなつて夕飯におかゆを食べた
雷が鳴つて電氣が消えてしまつた



八月二十三日 水曜
天氣 曇
起床 六時二〇分
就床 九時五七分

まだすつかりしないので學校は休む
朝(午前三時頃)雷が鳴つた
近くへ落ちたらしく電氣が消えて仲々つかなかつた
今日は地藏祭りと九萬九千日なので朝からチン〳〵と鐘の音が聞える
お參りの人が一杯になつた頃 雷が鳴り大雨が降つた
大勢の人が前の小母さんの家に雨宿りをして見えた
雷が落ちて停電した
前の道を一杯泥水が流れて行く
家の中へも水が入つた
小さい子供が鳴きながら走つて行く



八月二十四日 木曜
天氣 晴
起床 六時〇分
就床 十時二〇分

朝起きたら気分が大へん好かつたので學校へ行つた
先生に欠席屆と体育簿を出した後私達の教室と廊下をお掃除した
西組の見學は私一人でしたのでとても大へんだつた
でも後から東組の首藤さんや大屋さんが手傳つて下さつたので大へん好かつた
今日學校で吉野笑子さんから正木先生が御病気だときいて大へんびつくりした
二十一日から寢てゐらつしやるのださうです
色々お相談してから今日果物籠を持つてお見舞に行く事になつた
母が「まだ直りきらないのだから」と仰言つたが思ひきつて行く事にした
十二時半に福岡さんの近くへ集つて行きました
井口さんがゐらつしやらぬので呼びに行つたら家の中にかくれて上利町へ行つたと嘘をつかれた
私は本當に厭だつた
先生は大分好くなつて起きてゐらつしやつた
昆虫を捕へた
少し御ち走になつて午後五時頃歸りました



八月二十五日 金曜
天氣 曇
起床 五時十三分
就床 九時三七分

今朝起きた時 頭が痛かつたので見學する事にしました
今日も昨日と同じやうな事でした
が西田さんと今田さんがゐらつしやいましたので割合に早く出来ました
家に歸つてから昆虫を見せて戴きました(篠塚美奈子さんに)
吉野和子さんにお手紙を出しました



八月二十六日 土曜
天氣 晴
起床 五時五〇分
就床 九時三七分

晝前は勉强して晝から富貴子と𐮷田沖の方へ蝗を取りに行つた
まだ坊主ばかりでそんなにたくさん居なかつた
それでも紙袋に二杯程取れた
家に歸つてから天井につるしておいたらガサ〳〵と八口ましくて仕様がない
外さうとしたらお兄様が「面白いからそうしておけ」とおつしやつたのでそのまゝにして居いた



八月二十七日 日曜
天氣 晴
起床 五時二七分
就床 十時三〇分

晝前は水郷の景色を書いてそれから妹や河田さんと田圃の方へ蝗を取りに行つた
後から兄さんもゐらつしやつた
今日はとてもたくさん取れた
家にかへつてから布の袋をつくつて皆まとめて其の袋の中へ入れた
夜 青年の人達がパン〳〵と演習をしてゐた



八月二十八日 月曜
天氣 晴
起床 五時十七分
就床 九時二〇分
内閣總辭職

今日始めて河原へ行きました
岸えり子さんと一緒でした
歸りに休んだ所で山まゆの大きい蛾を捕へて大へん嬉しかつた
これを軒に下げて居くとその蛾がめすならばをす をすならばめすが着てゐると行く事を中野先生にお聞きしたことがあるので夜出して居いたが又此の間のように逃げられてしまふといけないと思つたのでもう止めて居いた



八月二十九日 火曜
天氣 晴
起床 五時十二分
就床 九時二〇分

今日の作業は學校に殘つて講堂のアク取りと油ぶきを致しました
とても綺麗になつた


散文(批評随筆小説等) 女學生日記 三十 Copyright TAT 2022-08-30 07:55:37縦
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