残響
ひだかたけし

世界の残響のなかにいる
わたしをおちょくるな
微細な世界のリアルが必要だ

私たちはあまりに未完成だから
消え入る前に
羽を安らえる場所が必要
憩える場所の安息が必要

私たちは救われない
素敵な記憶は心を温めても
私たちは本当には救われない
自分自身の魂によるほかは
魂の深奥の残響によるほかは

独り、独りが歩む道
時に交わり時に別れ
独りになる白い小部屋
独り、独りが歩む未知

遠い宇宙に打ち寄せる波
眼前の世界から零れる白砂
たえまない蝉時雨のなか
わたしは病んだ体を携え進む

今日、人生のある一日に
奥底からの声の木霊を聴く
大地が裂け空が落ち
その奇妙なまでの実在感に
わたしのたましいは打ち震える

声の残響は永遠を一瞬に切り取り
光輝く地上の光景を展開する
其処には懐かしい人影が揺れる

懐かしい人影が立ち上がる
また何処かで必ず逢えるからと
力強く声を響かせた
懐かしい人影が













自由詩 残響 Copyright ひだかたけし 2022-08-07 18:14:55縦
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