その瞬間まで
ひだかたけし

吸い込まれる
遠い汽笛
戯れる子供達の影
娘は出かけたきり帰ってこない

壊れたら
水底深く沈むしかない
たましいの強さを信じて
人生の終わりに
輝くものはあるか
内面深く沈潜して

薄暮の訪れ
親友も去った
哀しみの反復
独り傷んだ小舟を漕ぐ
ひたすら
どこまでも
属すべき故郷を目指し

明日は未知
近付く死の瞬間
先取りも覚悟も出来ない
ただ内面深く沈潜して
輝くものを待っている
戦う必要はない
どうか、光に眼を向けて
私たちは皆同じ

正反対のものが
魂の深みで親和する
遠い汽笛、戯れる子供達の影
娘は出かけたきり帰ってこない

世界は比喩
永遠の、霊性の
わたしは躍り続ける
その瞬間まで

その瞬間まで










自由詩 その瞬間まで Copyright ひだかたけし 2022-08-02 19:12:54
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