初任給の貰い手
番田 

四月、就職したばかりの頃、僕は配送センターで最初は働いていた。センター長からスーツで来いと言われていたのだが、次第に意識は落ち、デニムにネルシャツといった私服でそこまで通っていたものだった。そして、申請していた路線とは別の安い路線を使っていた。でも、思いがけないほど、最初の給料は税金がかかっていなかったから良い額だったので、うれしかったのを覚えているのだ。帰りの駅前で、ケンタッキーを食ったものだった。しかし、オーディオユニオンに足を伸ばした僕は、そこでワディアのDAコンバーターを視聴させられ、魅了させられた。当時は、TEACの再生メカにその会社のDAコンバーターを搭載した、夢のようなモデルが出ていたからである。しかし高過ぎて手は出なかった。僕は音が良いのかどうかは正直わからなかったが、販売員の太った男の言葉によって、完全にそのモデルを買う気になるように説得させられ、洗脳させられた。


散文(批評随筆小説等) 初任給の貰い手 Copyright 番田  2022-04-25 01:29:23
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