あやまる
坂本瞳子

謝って欲しいのはあなたじゃない
あなたはなにも悪くない
私だって悪くない
悪いのはあの人だ
それは皆にだって明らかなはずだ
だのにあの人は謝らない
だからってあなたが謝らなくていい
むしろ謝らないで欲しい
やるせない気持ちが私の中に募る
罪悪感が芽生える
謝るべきはあの人なのに
謝ることができないあの人を
気の毒にさえ思うけれど
謝らない限りあの人を
許すことができない私自身も
かわいそうに思えてくる
たったひと言
ごめんでいいのに
それを聞くことができなくて
こんなに汚い気持ちが自分の中で
蠢いている
この気持をどう処理したらいいのかが
分からなくて
憎しみにも似た感情を
あの人に対して覚える
これ以上この嫌悪感が増大する前に
どうかさっさと謝ってくれたまえよ
こんな風に思う私は
間違っているのだろうか


自由詩 あやまる Copyright 坂本瞳子 2022-02-10 21:56:27
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