夏のどこかで
番田 

僕は昔バスで湘南まで足繁く通っていたものだった。夏の駅前にたむろする女の子たちの姿を目にすることが、僕は毎年の楽しみだった。そうであるとはいえ、コロナで昨今は、でも、そんな姿も見かけられなくなってはいたが。逗子の駅前にある個人経営の喫茶店で良くランチを、そして、今年も食べていた。そこは少し大通りから離れただけだったというのに、住宅街のように静かな店だった…。看板メニューだとされるオレンジジュースを飲んでみたかったが、尋ねると、定食には、それは、付けられないものだった。そして店主の、それを作るのを面倒に思っているように感じられたオレンジジュースは、単品で頼むには少しだけ割高だった。僕は鮭のスモーク焼きを食べながらテレビを見あげると、オーサムシティークラブが出ていた。その別のときにはオリンピックのゴルフ中継の強烈な日差しの中でプレイしている人の様子が放送されていた。サラダのような料理にはイカが入っていた。僕は店主が来る人ごとに、日替わりメニューの内容を変えて案内していることが気になった。その理由は最後までわからなかったのだが。


バスに乗ると、流れ出す景色の中。とにかく、本当に、人は、少ない。コロナの前は帰りはバスに乗れずに歩いて帰ってきたこともあったほどだった。車内を流れる風を感じながら、遠い田舎に来たかのような錯覚を覚えていた…。8月のあの日に見ていた磯のところにある、プールのようになっている入り江には、家族がよく泳いでいた。僕は近くに公衆トイレがあったので、気になってそこに入ったことはなかったのだが。


散文(批評随筆小説等) 夏のどこかで Copyright 番田  2021-10-07 01:32:28縦
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