それは猫だった 2
RAVE

仔猫はとても醜かった。
気持ちのいい感情ではないが
それが本音だ。
きっとノミだらけだろう。
なんの病気を持っているかわからない。

でも生きている。
生きているという事は
神がこの世に生まれる事を許可したという事だ。
この仔猫は
神に愛されているという事だ。

私はどうしたらいいのかあたふたしているように見せながら
頭の中では保護する事しか考えていなかった。
しかし用事が迫っている。
今から急いでも多分ぎりぎり間に合わない。
考えあぐねていると
自宅に主人がいる事を思い出した。
ちょうど休日でまったり過ごしていた所だった。

私はすぐさま自宅へと駆け
主人を呼びに行った。
仔猫が怪我している事を伝えると
とても困惑しながらも納戸へ行き
小さな段ボールを手にして戻ってきた。

二人で現場に駆けると
仔猫はさっきまでの場所から
少し遠くまで逃げていた。
主人は今までほとんど猫と関わった事がない。
主人もそこの奥さんと同様、
猫アレルギーだったのだ。

主人はかなりあたふたしていた。
私は主人のそういった部分をあまり見たことが無い。
こういう態度は
部屋にゴキブリが出た時ぐらいしか思い出せない。
いつも比較的おっとりしている人だ。
ゴキブリ同様、どう対応してよいかわからないのだろう。

主人はまるで一日履いた靴下を掴むかのように
仔猫の首を掴み上げると
そっと段ボールへ入れた。
私は主人に病院に連れていくよう伝え
家族連れにも保護する事を伝えた。
奥さんは私達の自宅がアパートなので
動物を飼えないんじゃないかと心配してくれていたが
私は今後の事も考えず
なんとかしますと笑顔で返答した。

こうして私達は
12月頭の寒い昼下がりに
仔猫と出会った。
仔猫にとっても
運命が大きく変わった瞬間だったに違いない。

私はこれから起こる事柄は
キラキラと光り輝いているに違いないと
胸を躍らせながら
目的地に向かった。
幾度となく通ってきた退屈な道は
そこには無かった。


散文(批評随筆小説等) それは猫だった 2 Copyright RAVE 2021-09-28 19:40:34
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