愛のかたち
umineko

父親のことを書こうかと思う
優しい男だ
優しさを通り越して
気弱であった
かなり痩せ型で
ひょろひょろしていた
まあこうして
兄も私も
それなりの社会人に仕立てたのだから
立派な大人、のはずなんだけど
重みがなかった
絵本に出てくる
空腹のロバ そのもの
 
私が大学生の時
突然出家した
仕事を辞め 
大学に通い
僧侶の資格をとり
 
法衣を着て
家々をめぐる
法話を説く彼は
楽しそうだった
 
愛にあふれていたんだ
今なら
私にはわかる
 
気弱で
重みがない
でもやたらに愛があった
破れた障子
あぜ道のもぐら
分け隔てなく 愛していたのだ
 
私は
愛の扱い方が どうも苦手で
選択と集中 でしたっけ
たぶん照れくさかったのだ
星降るほどの 愛を浴びて
 
母は時々
ああ、お父さんがいたらなあ、と
他界して10年もたつ父を
お茶の合間に懐かしがる
そんな母も 去年逝った
 
愛のかたちは
星の数ほど
 
わからないまま
大人になりました
 
だけど まあ
それでいいよね
 
父さんならわかるはず
たぶん ね
 
 
 


自由詩 愛のかたち Copyright umineko 2021-08-17 22:12:03
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