立体交叉
あおば

          

君はこの子を残して逝った
こんな可愛い幼女を残して
未練は無かったのか
僕の心は未練だらけ
あどけない笑顔に仕草
今日に別れるなんて
思わなかったよ

別れる時は来るのだ
君は写真となつて
笑顔で歩いて行く
幼い顔した僕も行くのだ
目の見えぬ母の手をとり
眠る児を抱きかかえ
ついて行くのだ

送別の儀式が終り
南に向う人の列
北に向う人の列
誰もいない広場に
日が射して
地面がてらてら光っている
跳ねまわり駈けまわる
面白がって見ている児
可愛い笑顔、可愛い仕草
生まれた児と死んだ児と
ここではなんの区別なく
屈託ない時間、あどけない

エンジンをかける
単調なリズムで右折して
追いすがる車の群れをぶっちぎり
小さなバイクはフルスロットル
環八の立体交叉を駆け上り
今日の、
葬儀を済ませた





----------------------------
小さいバイク GS125E

初出 「徒手空拳の詩人の会」 2000年3月27日



未詩・独白 立体交叉 Copyright あおば 2005-04-23 23:53:09
notebook Home 戻る  過去 未来
この文書は以下の文書グループに登録されています。
モーターサイクル(バイク)