透明なペン
やまうちあつし

君も詩人なら
透明なペンくらい持ちたまえ
黒い万年筆とか
青いボールペンとか
そんな当たり前のペンで
満足しているようじゃだめだ
透明なペンなら
どこにでも言葉を書くことができる
しかも
どこに書いてあるのか定かでないから
勝手に消されることもない
どんな権力者にも
決して消されない言葉を
詩人なら目指したまえ
君が言葉を書きつけるべきは
ノートの上ではない
誰かの肩の上に
あるいはどこかの塀に
そして未明の東の空に
やがて彼の人のまぶたの裏に
消せない言葉を記したまえよ


自由詩 透明なペン Copyright やまうちあつし 2021-05-15 07:32:40
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