春の頸動脈
クーヘン


出血多量のごとく、桜は咲き乱れる

満開に、とてつもなく溢れ出す

一刻の猶予もない

春が苦しそうに何かを叫んでいる

しかし、人々は通り過ぎてゆく

なぜ誰も知らん顔なのか

今ここで、春が死にゆくというのに

花弁の一滴一滴、ぽたぽたと

一刻の猶予もないのに

なぜ僕までも知らん顔なのか

足早に過ぎてゆく季節に足を止め、

春の頸動脈を止血してやらねばならぬのに




自由詩 春の頸動脈 Copyright クーヘン 2021-04-05 14:06:35
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