料理で俳句④鮪のづけ丼
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本日のお品書き~マグロのづけ丼~


  ピカソの鮃のごと中落ちの骨残る


 逗子の駅前にスズキヤという食品スーパーがあり、ものがいい。実にいい。その分高い。特に魚は群を抜いて鮮度がよく、価格もまた群を抜く。他のスーパーや鮮魚店の三倍から五倍、べらぼーに高い。高いけれど魚好きの私としては顔を出さないわけにはいかない。

 それでも時々「えっ!?」と思うほど安く、値段を間違えてるんじゃないのとおもってたら、案の定、翌日は倍の値段になっていた。芝エビとか、舌ビラメとか、ソーダ鰹などにこのうれしい間違いが多い。しっかりしろよ。

 マグロのサクは高くてとても手が出ないけれど、鮮魚売り場と少し離れたところに中落ちとか腹回りとか、包丁の入らない部位が置いてある。おおくの客はマグロの食えない部分と思ってるようで、なかなか手を出さない。しかし、それらの部位をスプーンで掬うことで、赤身~中トロ~大トロまでとれる。家族で食べても十分な量があって八百円台。どう?安いっしょ♪子どもはさっそく海苔を細く切り、ごはん粒で両端をくっつけて軍艦にして食っている。中落ちをしょうゆに浸すと脂がぱーっと広がる。いいマグロだ。熱燗がすすむ。残ったら翌朝はマグロのづけ丼(鉄火丼)にする。

 づけ丼はほんの一分でできる。あらかじめ「昆布しょうゆ」を作ってあり、冷蔵庫で冷やしているから。この「昆布しょうゆ」は二年間仕事をご一緒した料理家の栗原はるみさんに教えてもらったもの。このしょうゆはづけ丼はもちろん、魚の煮つけや筑前煮(煎り鶏)などにも使える(サザエや尻高などの巻貝の煮びたしに使うと蓋が開かなくなるから要注意。昆布しょうゆに使っているみりんが身を固くするので)。

 アツアツの炊き立てご飯に昆布しょうゆに浸したマグロをかけ、これまた一分で食ってしまう。朝の食卓は鉄火場じゃないけれど、早食いしてしまう。食後は京都一保堂のほうじ茶。休日の朝ならよく冷えたヱビスビール。今日も仕事帰りにまたスズキヤを覗くんだろうな、うれしい間違いも期待して。

*書きながら思い出したが、祇園町北側の細い路地を入ったところに「山口大亭」という店があり、この店は祇園の花街で働くおねえさん・おにいさんたちを相手にする飯屋だったが、ここで出されていたのが鉄火飯だった。やっぱファストフードだったのね。この店で飲んだ日本酒正一合瓶二十四本の記録はまだ破られていないのだろうか。底抜けにアホな青春どしたなあ。


俳句 料理で俳句④鮪のづけ丼 Copyright SDGs 2021-02-12 15:20:42
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