「車窓」
服部 剛
線路は明日へ、延びてゆく
明日の線路は、過去へ至り
過去はまた道の続きへ
二度とない今日の日を経て
旅の列車は走り始める
恋に傷んだ、町を過ぎ
日々の重さに憂う、町を過ぎ
0・1秒のいまを過ぎる 車窓
ビル・ビル・雲・学校・工場
過去・過去・いま
いま・いま・明日
明日・明日・いま
いつしか――山・山・霧
の向こうに透ける白い太陽
全ては やがて
思い出になるだろう
旅の列車の
前に座る、女子がふたり
ささやかに語らう
日々の恋の
懊悩
(
おうのう
)
よ
いつか今日の場面は
額縁に納まる 一枚の絵 になるだろう
遠い空の下にいる友よ
あの日の君も、僕も、弱かった
人生とやらに
耐えかねて
だけどいま思う
その源の〝 思い出〟という地点から
物語の頁の余白に 作家の文字は走り始める
ウイルスの
蔓延
(
はびこ
)
る
この地上に瞬く星を探す
旅の始まり
あなたと私のサークルは
日常に宿る 宇宙の輪
道は続いて、延びてゆく
自由詩
「車窓」
Copyright
服部 剛
2020-12-05 21:34:09縦