古着屋さん
クーヘン



コーデュロイと10回唱えれば秋となる。
デュの発音、決して油断なさらぬように。



古着屋のお兄さん、元気かな。
首筋に、五芒星の墨の入った。



MA―1を着た男娼、今宵は鍵穴となる。
昨晩は確か、鍵としての役回りだったが。



あの子のバーバリーのマフラー、偽物。
あの子の体育教師への淡い恋心、本物。



名もなき海外バンドのツアーTシャツ。
背面に、名もなきライヴハウスの列記。



アメリカ村の三角公園で兄と待ち合わせ。
内角の和を求めながら、兄を待っている。



また似たようなネルシャツ買っちゃった。
いまだに僕は兄の幻影を追い求めている。



日々、僕は僕を着古してゆく。
これぞ一点物のヴィンテージ。



死ぬことは体を脱ぐことなんだってさ。
脱いだ体、また誰かが着てくれるかな。



さようなら、思い出の古着屋さん。
僕はあまりにも年をとりすぎたよ。




自由詩 古着屋さん Copyright クーヘン 2020-09-13 14:39:04
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