夏のトンネル
クーヘン



トンネルに入る瞬間、お前の瞳孔は開く。
嘗て獣だった頃、お前は俺を殺ったのさ。



僕の陰茎は暗闇に包まれすぎている。
なので、包み隠さずに打ち明けます。



夏のトンネルに幽霊が8.1人いる。
その半端な0.1人とは僕の生き霊。



可愛いあの子がくれたパインアメ。
その穴を舌先で舐めてごめんなさい。



産道を一人歩いていた、いつかの夜。
ぼんやりと見える月明かりを頼りに。



バウムクーヘンをたくさん繋ぎまして。
誰かの心へ、トンネル開通できたなら。



心細い夜、その細い心を針の穴に通す。
取れかけていたシャツの釦、付け直す。



夜道にて影を落としてしまいました。
影も落ちないほどの、暗い夜道にて。



暗く長いトンネルにも飽き飽きだね。
青葱みたく、小口に刻んでしまおうか。



トンネルを抜けると、9月になっていた。
トンネルの出口は、夏の出口なのだった。




自由詩 夏のトンネル Copyright クーヘン 2020-09-07 22:53:04
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