閉ざされているような
フユナ

冬からようやく春になります
夜空がもう春になりました たぶん
桜がもう芽吹いています
知っていますか
東京、よりも半月も遅い


川の流れは順調です
これ以上ないほど順調です
その先に家があります
あなたの家です
灯が見えればいいといつも思う


とりとめなさ、はいつものことです
風に吹かれたときに
星を見上げたときに
と書くと笑うでしょう
あなたの名前を


何が言いたいの、と聞いてください
ありがとう
でなくて
何が言いたいの、と聞いてください


ドアノブを切り落とされた扉
カッコウが鳴かない横断歩道
馴染まない「ピーチコロン」の
くすんでいく歩道橋
という思い出
(数学のノート
 緑の柄の鉛筆
 くすんだ赤い鞄
 とりあえずの短い靴下
 アキレス腱)
閉ざされているような
そうでないようなこの闇



川の流れは順調です
よどみはしてもまっすぐで
これ以上など望むべくもない
その先に家があります
あなたの家です
あなたの灯がついているので
足下の
春の花を摘み上げます

黄色、

川の流れは黙々と
海まで続いているので
私としても光が必要でした


何が言いたいの、と聞いてください
桜が咲くんです ここにまた
東京より、半月も遅く
それをあなたに伝えたいのです
そしてまた
何が言いたいの、と聞いてください
そしてまた
何が言いたいの、と。












未詩・独白 閉ざされているような Copyright フユナ 2005-04-15 01:37:46
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