卑猥な落書き
こたきひろし

絵心なんて欠片も感じられない
相応に絵の素質なんて持ってないだろう

公衆便所の個室の壁に書かれていた
下手くそな絵の落書きは
下品で卑猥だった

作者は用をたす前に書いたのか
用をしながら書いたのか
用が終わってから書いたのか

想像するだけで可笑しくなった

作者はきっと性的欲求に充たされていない人物だろう
とか
或いはその反対なのかも知れない
とか
想像するだけで楽しくなった

どっちにしても幸福から見放された人なんだろうな
とそれを「正解」として括りながら

私は用をたすと卑猥な落書きの横に
詩を一編書いて残した

即興で
美しい言葉を紡いだ

それはそれは
卑猥な落書きに皮肉を込めて

私もまた
幸福からは見放されていた
哀れな羊だから

羊がゆえに


自由詩 卑猥な落書き Copyright こたきひろし 2020-07-08 23:20:55
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