Kちゃん
ジム・プリマス

 Kちゃんは、僕が出会った人格破綻者の中では最強のキャラだ。その勘違いぶりは見事というか強靭で、完全に自分では美人で気立てが良い完璧な人格だと思い込んで自己完結していた。
 見てくれは、色が黒くて、下膨れのタヌキみたいな顔をしていて、頭が悪く、感覚が鈍くて、性格が歪んでいる上に、超、図々しくて、厚かましく、態度はイケてる女の態度ありありで、いつも自信マンマンだった。
 最初に会った時、彼女は、こちらは何とも思ってないのに、私に惚れてるでしょうという態度ありありで、僕は彼女に勝手に迷惑そうな顔をされて、イライラしたものである。それでいてこちらが内心イライラしていることなど、とんと無頓着で、まるで気が付かないのである。彼女のそういう態度を目の当たりにするたび、僕は悔しいと言うか歯痒い思いをさせられて、すっかり彼女が嫌いになってしまった。
 なんと言うか、感覚が鈍くて、頭が悪すぎて、物事を自分の都合の良いようにしか解釈できないのだ。自分の解釈を信じて自分を決して疑わず、現実の方を強い想念で完全に歪めてしまう。心底、嫌われているなんて想像も出来ないのだ。
 彼女の放つ毒には、相当の威力があり、まるでブラックなギャグ漫画の主人公みたいと言うか、いつも身勝手で我儘で、その上、そのぶん、強気で「組合活動なんて、なんでやらなきゃならないのよ。」と厚かましく言い放って、後輩のしかも美人の女子事務員を激怒させたりとか、とにかく同性からも嫌われていた。
 そのくせ、憎まれっ子世に憚るとでも言おうか、やたら調子は良く、僕の同期の中では一位、二位を争うイケメンと(僕には彼女のどこが良かったのか、さっぱり分からないが。)要領よく付き合っていた。最後の頃は彼の方も彼女の愚痴に辟易していたそうだが、詳しいことは分からない。関係があるのかどうか知らないが、その後、彼は会社を突然、辞め、失踪した。
 その後で、彼女の方も会社を辞めたので、関わりがなくなったことで僕はホッとしたことを覚えている。
 怖いもの見たさで、現在の彼女のインスタを覗いてみたい気もするが、彼女の放つ毒気にあてられる事のほうがのが恐ろしいので止めておこうと思う。
 今にして思えば、Kちゃんは、僕の精神を僕が思っている以上に深く損なったのかもしれない。いまだにKちゃんの悪夢の呪縛から完全には解き放たれていない気がする。



散文(批評随筆小説等) Kちゃん Copyright ジム・プリマス 2020-07-06 17:43:11
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