一夜
直治

膝に雨の破片をもらう
廃工場に夜の闇がきしむ
朝陽に朝帰りのおかしさ
さっさとお祈り終わらせて人ごみをぬける
朝の待合室で笑えない話きいてる
奴隷あつかいうけていると同僚が笑う夕暮
酔ったみんなで駐車場のあかるい月
飼っていた鳥が死んだ埋めた話
月のぬくもりにさえざえと橋渡る
しずかな郊外の夏の空をあるく
叔父にもてなされて花火見ている
夏にしか鳴かない虫が鳴くコンビニへ行く
ひとりだけ取り残されたような歩道橋の灯り
黄昏にかすんで橋の向こうの顔が見えない
死んだ花に秋の陽のよりそう
虫の音もない秋の暗さに我が身をひたす
祖母のよくできた朝食に手あわす
流れついた宿で雪の予報

https://twitter.com/Naojihaiku


俳句 一夜 Copyright 直治 2020-07-04 12:27:14
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