古椅子
田中恭平

古椅子に
潮風がふきつけている
古椅子は家の比喩だ
古椅子は父性の比喩だ
海外では
日本のように
長期間にわたって
眠剤が
処方されることはないという
最近は夜が怖いんだよ
銀紙を舐めている気分だ
父の朝は
はやい

わたしの生活は牢獄のそれで構わない
決まっている、ということに
安心する
口内に
きえない口内炎があって

神経から出ているのかも
ともおもう
三十二歳になって
暗い話にも詳しくなって
ハーブの葉を噛み
縁側で
きょういちにちを終える
父が
オーディオでポップスを聞いている
あいすくりいむが溶けてしまった
一体はわたしは何をしていたんだろう?
文学に生きると決めたのに
日記をつけることすら
忘れていたんだよ
椅子が倒れる




自由詩 古椅子 Copyright 田中恭平 2020-03-05 17:47:59縦
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