カップラーメンをすすりたくなって
こたきひろし

仕事が終わった
一日の勤めから解放された

極寒の夕暮れ
車で家へ帰る途中
無性にカップラーメンをすすりたくなって
コンビニに立ち寄った

そこでカップヌードル一つだけ買った
それから少し迷ったが
店の奥に設けられたイートインコーナーへ歩いた

そこには先客がいた
見るからに気難しそうな顔つきをした老人がいた
一人でイスに座っていた
何をするでもなく
一人ですわっていた

もしかしたら老人はその場所に長い時間すわっていたように思えた
それは行くところがなくて帰るところもない老人のような気がした

私は老人からイス一つ離してすわった

私はカップヌードルの封を開けて蓋をあけた
直ぐちかくに備え付けのポットあって席を立とうとしたとき
ヌードルを包んでいたビニールが落ちてしまった
すかさず老人が言ってきた
「拾いなさいよ」
強い口調だった
私が拾おうとする前にわざとらしく言ったように思えてならなかった

私はビニールを拾うとカップヌードルも持ってごみ箱のところへ行った
そして躊躇なくみんな捨てた
老人への反抗心から

私はそのままコンビニを出た
ふたたび
極寒の夕暮れの中に

果たして私は間違っていなかったのか
振り返れば
浅はかで愚かな行為に違いなかった

未だに苦い思い出になっている


自由詩 カップラーメンをすすりたくなって Copyright こたきひろし 2020-02-22 09:06:39
notebook Home 戻る