夢の亡命
a missing person's press


 夢を鋳造する道具がほしい
 階段のうえで夜が
 問いかけるから
 他人の室から他人の室へ移動する
 平行線上の窓に人参が大きくふくれあがる
 かなしい大根の、葉っぱがゆれて、
 まだだれも殺したことのない手で料理しつづけるとき、
 からみついた序詞が文語と和解する、亡命料理の図鑑だった
 みんな、ばかだねとメカジキが吠えてる
 きっとだれもいないくなった室で、
 身を横たえることの技法は、
 ひらがなでなければならないのだ
 それならば夢はふたたび主語へと還元される
 おおきな林檎のなかでだれかが泣いてる
 ガス・スタンドの灯りのもとで、
 ローズマリーの壜を見つけた
 やがて鋳造される夢のために家庭をしつらえよう
 ひたすら他人を犠牲にしてメークインを切りまくる
 ソラニンが生えてきたから、殺戮を始める
 きれいだね、きたないね、でも、きれいだね
 遠心分離機がマクベスを朗誦するあいだ、
 ふりむいた顔が他人じゃなかったというだけの理由で、
 ひとがひとり、ひとでなくなり、
 あらゆる名詞を失った、子供が隧道のむこうから、
 ぼくを呼びつづけてる。


自由詩 夢の亡命 Copyright a missing person's press 2020-02-15 20:20:51縦
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