夜のけむり
和田久也

紙に巻いた夜闇を吸い込むと
久々なので立ちくらみを起こす
街灯もない田舎
そこはもう「世界」ではない

こんな季節では虫も鳴かない
夏に気が滅入るあのざわめきも
今はない
じっとりとしたあの風情も

あるのはただ夜のけむりだけ
紫煙として
燻ぶっている心の裡の憂鬱だけ

実感もおぼろげに
ただただくゆるこの煙

寒い


自由詩 夜のけむり Copyright 和田久也 2020-02-05 02:32:21縦
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