あかり はじまり
木立 悟





羽も 曇のかけらも息苦しく
空の喉から吐き出されている
水平線に生い茂る咳
白く白く渦まく風


動かぬ曇の歯車が
動かぬままに重なりつづけ
やがて月に照らされながら
高圧線を撓らせてゆく


数え切れない夢が傾き
倒れることなく寄りかかるまま
白い石の群れとなり
荒れ地を双つに分けてゆく


失う前と
失った後を行き来しながら
原野をかきむしり 進みつづけ
水に沈んだ径に着く


水は赤子
夜は語る声
音の無い動きすべてに
光をまぶす


凍りかけた水のなか
片方だけが欠けた陽と月
氷を歩む灯と光の子
小さく散り咲く笑みと声


石の径の中央を
足首に触れる見えないものらをほどきながら
光の粉の音を着て
しんとした明るさを歩んでゆく


何もかもに置き去りにされた朝
短い夢ばかりが現われては消え
白く震える枠の内に
最初の言葉が降り来るのを見る


















自由詩 あかり はじまり Copyright 木立 悟 2019-11-21 09:44:59
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