アンテ


高く頑丈な壁だった
男は毎日まいにち
石を投げつけて崩そうとした
辺りに転がっている石は
どれも脆く
壁にぶつかるとぐしゃりと潰れて
壁にへばり付いたまま固くなった
毎日まいにち
石を投げつづけて
へばり付いた塊が成長して
すっかりもとの壁は見えなくなった
ごくまれに
どこか遠くから
なにかを叩く音が聞こえると
男は壁に耳を押しあてた
けれど音の源はわからなかった
日が暮れると
木陰にうずくまって眠り
日が昇ると
起き出してまた投げつける石を探した
手頃な石が見あたらなくなると
男は壁沿いに移動した
壁はどこまでも続いていたし
石はどこにでも転がっていた
時折ふと我に返って
空を見あげると
小さな鳥が一羽
ゆっくりと舞っていた
壁の稜線のはるか遠くを
変わることなく
翼を広げて舞っていた
男は大きく息を吸って
しゃがみこんで
また次の石を拾った




自由詩Copyright アンテ 2005-04-06 00:30:51
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