口無
やまうちあつし
私の仕事は
人を裁くこと
私が、というより
法律と照らし合わせて
代わりに判断しているだけ
何の代わりかといえば
大きなものの、としか
言いようがない
それはとても
大きなもののようでいて
実は中くらいの
大きさでしかない
そのことに気づいている
人もいるだろう
今日
何人かの処分を決めた
一人は罰金五百万
一人は懲役二十年
一人は無罪
一人は死刑
私には私の声がない
ただ伝えているだけ
昼休み
近所の書店で
古い詩集を買い求める
公園のベンチで
タマゴサンドを食べながら
それを読み少し泣く
花壇には白い花が咲いている