口無
やまうちあつし

私の仕事は
人を裁くこと
私が、というより
法律と照らし合わせて
代わりに判断しているだけ
何の代わりかといえば
大きなものの、としか
言いようがない
それはとても
大きなもののようでいて
実は中くらいの
大きさでしかない
そのことに気づいている
人もいるだろう
今日
何人かの処分を決めた
一人は罰金五百万
一人は懲役二十年
一人は無罪
一人は死刑
私には私の声がない
ただ伝えているだけ
昼休み
近所の書店で 
古い詩集を買い求める
公園のベンチで
タマゴサンドを食べながら
それを読み少し泣く
花壇には白い花が咲いている


自由詩 口無 Copyright やまうちあつし 2019-10-29 14:04:33
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