おぉトイレ
イオン

こちら円盤二十七号
地球の観測状況を報告します

人類はトイレという場所に
頻繁に出入りするようです
入るときは硬い表情ですが
出るときは緩んでいます
時折順番待ちの行列もできたり
すべてをかなぐり捨てて
飛び込む者もいます
上空から内部は確認できませんが
とても大切な施設のようです
内部調査のため
着陸許可をお願いします

男子用と書かれた
トイレに侵入しました
人類は壁に付いた器の前に立ち
手元で何か作業をしています
あっ、覗き込んだら睨まれて
手元を隠されました
見られて困る秘密があるようです

少し観察しました
作業中に表情が緩んでいきますね
あぁ、満ち足りた表情から
器と合体してエネルギーを
補給しているようにも見えます

おや、トイレの奥には
小部屋があります
ここでは床に器が置かれており
壁の器とは目的が違うようです
内側から鍵が掛けられるのですが
天井が空いており意味不明です
中に入った人類からは
衣服を脱ぐ音がします
力の入った小声やため息も
あっブリッと破裂音がしました
服を脱いで体の一部を
手入れしているような感じです
もしかして人類は我々の知らない間に
サイボーグ化しているのかもしれません

しかし大切な場所にしては
警備員もおらず無許可で入れますので
人類征服には、まず
このトイレから攻撃すべきだと思います
なお、確認のため人類に
直撃インタビューを行ないます

「あの、すいません、トイレって
 何をする場所ですか?」
「はぁ? トイレはトイレですよ
 あんたも変な人だね
 宇宙人みたいだなぁ」
「えっ、どうしてそれを…」

緊急報告します、調査失敗
人類に正体を見破られました
申し訳ありません
責任を取って
小部屋で自爆します
「おぉトイレ!」……ボム!

初出:NIFTY-FPOEM 1996/08/30 を推敲


自由詩 おぉトイレ Copyright イオン 2019-10-24 21:30:53
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