かきフライ
043BLUE

先生、
ぼくのお兄ちゃんが
このあいだ死にました

ぼくのうちは
3人兄弟です
全員男です

まん中のお兄ちゃんが
死にました

名前はゆうごです
ぼくは「ゆうごちゃん」と
よんでいました

高いところから
まちがって落ちて
死にました

ぼくが学校にいたら
先生がよびにきて
「すぐ家に帰りなさい」て
いいました

家に帰ったら
一番上のお兄ちゃんが
車で待っていて
すぐに病院に向かいました

一番上のお兄ちゃんは
車の中で
「ゆうごはもうダメかもしれん」と
言って泣きました

ぼくは
意味がわかりませんでした




一番上のお兄ちゃんは
ゆうごちゃんを「サル」といって
よくからかいました

すると、ゆうごちゃんは
顔をまっ赤にしておこりました
「ほらやっぱりサルや」と言って
一番上のお兄ちゃんは笑いました

でも、ゆうごちゃんは
ぼくとよく遊んでくれました

クワガタのいるヒミツの場所を
教えてくれました
ガンダムのプラモデルもくれました

ずっと前
スターウォーズの映画を見に
三ノ宮に
連れて行ってくれました

帰りに
「電車代うかす」言うて
途中から歩きました

ぼくが足が痛くなって
「もう歩けへん」言うたら
「家の近くまで行ったら、
 ガチャガチャやらしたるから
 がんばり」
て言いました

ゆうごちゃんは
やさしいです




ゆうごちゃんは、
てんかんという病気を
もっています

ほっさになると
きゅうにあわをふいて
たおれてしまいます

ずっとまえ
ゆうごちゃんと二人でコタツで
テレビを見てたら

ほっさになりました
舌がのどにつまると死んでしまうと
お母さんが言っていたから

舌がのどにつまらんように
おさえました
すごくこわかったです




一番上のお兄ちゃんと
病院についたら

ゆうごちゃんが
ガラスのへやの中に
いました

じんこうこきゅうきを
つけていました

病院には
1か月くらいいました

一番上のお兄ちゃんが
「ゆうごはしょくぶつ人間になった」
と言いました

しょくぶつ人間て
どんな人間なんやろと
思いました




にゅういんしている間は
家で一番上のお兄ちゃんと
二人でずっといました

近所のおばちゃんが
かきフライをいっぱい
持ってきてくれました

お兄ちゃんといっしょに
かきフライをいっぱい
食べました

うちはびんぼうやし
3人とも男やから
そんなにいっぱいの
かきフライを生まれて
はじめて食べました

「ゆうごちゃんも
おったらよかったのにな」
とぼくが言ったら
一番上のお兄ちゃんが
泣きました

2人で
泣きながら
いっぱい食べました




病院の近くの本やさんに
お母さんと行きました

ぼくが
「ハイスクール!奇面組」
「買って」ってゆったら
「そんなん、あかん」と言われました

ゆうごちゃんが
好きなマンガやったのに・・・

本屋の外でお母さんが
「あの子、ゆうごににとるな」と
言って泣きました

ぜんぜん
にてへんのに・・・

そのあとすぐに
ゆうごちゃんは死にました




先生、ぼくな
ゆうごちゃんに1回
ひどいこと言ってん

すごいひどいこと
言った

ずっと前、けんかした時に
「ゆうごちゃんなんか
 大人になって、ほっさになっても
 ひとりで住んどったら、だれも
 たすける人がおらんくて死んでしまうわ」
と言いました

そしたら、
ゆうごちゃんは
泣きました

ちっちゃい子みたいに
泣きました

先生
ぼく、ひどいこと言った

すごい
ひどいこと言ってもた

もう、あやまりたくても
あやまられへん

先生、ぼく
どうしたらええんやろ

ぼく、じぶんの顔
いっぱい たたいた
たたいて、たたいて、たたいた

先生、ぼく
毎日、あやまってるよ

でも、あやまりたくても
ゆうごちゃんは
もうおらへん

先生、ぼく
どうしたらええんやろ


未詩・独白 かきフライ Copyright 043BLUE 2005-04-04 21:13:12
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