露命
どん底
逆巻いてゆく梅の旋毛の音
毛羽立ってゆく空の繊毛の音
双生の呼吸は必然と呼応し震えあって
楽想となりまだ鋭い風に乗る
独り春の闇を知らない
その冬化粧がだいぶ薄れた君の横顔
ふいに孤をなぞって流れるもの
それは涙ではないような気がして
地に近づいてゆくほどに漉されてゆく
独りうすく折りたたまれてゆく冬
ざわめく梅と空
折り目はその震えに寒さをおき去りにし
だまってそれを君は見て
非力な手をかかげ風にそよいでいる
独り足音を偲ばせ啼く闇
ざわめく梅と空
大気はその震えに淘汰され
だまってそれを君は見て
うつろな声をささめき風にそよいでいった
独り時はながれ続けていた
君の姿はもうない
ただそこには幽かな震えだけが
淡い色をつけ棚引いていた
楽想は君には届いたのだろうか
すると鋭い風が朧気にうそぶく
彼女はもう人ではなかったと
全てはすべてを放し隔てそして離した
もうその楽想を知るものは誰もいない
そう一人その地で濾過された何かをのぞいては