八月の折り目
末下りょう


チャリのストッパーを跳ね上げた音が
八月の折り目に
鋭めに響いて
バイバイした


終わりが始まりに触れようとして、外側を内側に折り込み
内側を外側に折り返して発達する八月に沿って
いくつもの指先が
やみくもに闇を吸い込みながら
左右に激しく揺れ
折り目をひらき 、また折り目を折り重ねて
だまし船を鶴に折りなおすように
花束を折る


すれ違う電車の窓明かりに横顔を照らされて
モルモットのようにペダルを漕ぐ
星屑が並走する金網の向こう
崩れた花壇でカシャカシャ回るセルロイドの風車が
夜風から脱輪する
遠くの
パトカーか救急車か
シェルターの
サイレンを
追って


帰りはいつも
できることならあなたの涙を目蓋で握りしめて無言で立っていたい
けど、その代わりといってはなんだけど
まるめて捨てやすい
しわくちゃの花束を贈る
笑ってくれるうちは



自由詩 八月の折り目 Copyright 末下りょう 2019-08-17 19:33:47
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