天球儀
帆場蔵人
静寂のなか温められた器から
咲いたジャスミンの香りが
夜の輪をまわしていく
ぼくらは天球儀のなかにいて
ジャスミンが咲き誇り、てまねく
月よ、おいで、星よ、おいで
憂いに喉を腫らしたきみも、おいで……
儚く透けた静脈がいつか枯れ果てるとしても
つかの間、天球のなか
とめどなくまるくまるく
ジャスミンとまざりあい
天球にひとつ、またひとつと
星が産み落とされ星座という
物語をぼくらは飲みほして
夜の輪がしゃなりしゃなりと
憂いに腫れた喉をうるおし
また朝のなかへと放たれて
精いっぱいに歌えばいい