安い豆でも美味しい!コーヒーの淹れ方
パン☆どら

今回は皆さんに、安い豆でもおいしくコーヒーを淹れる方法を伝授したい。

私の経験では、薪ストーブで沸かした湯でコーヒーを入れるのが一番おいしい。そこで、次の手順でコーヒーを入れてもらいたい。

①田舎に土地を買う、または借りる

街中では薪ストーブは使えない可能性が大である。条例か何かを調べていただきたい。ただ、条例ではOKでも、近隣からクレームが起こる可能性があるので、やはり人里離れた田舎の土地を用意するのがよい。

②3畳ほどの小屋を建てる

小屋は3畳ほどの狭さで十分である。ただ、あまりに狭いと薪ストーブの熱で焼け死にそうになる可能性がある。Bライファー(※1)たちによると、3畳ほどのサイズまでなら建築許可が必要ないそうである。
間違ってもベタ基礎や布基礎(※2)といった本格的な小屋を建ててはいけない。あとで取り壊す必要が出た場合には面倒であるし、お金もかかる。私の経験では地面を適当に打ち固めただけの独立基礎でも十分である。傾いてきたらジャッキで小屋ごと持ちあげて、下に石でも詰め込めばいいのだ。同様に柱、壁、内装等も廃材利用で結構である。テーブルや棚を作る感覚で作ってみよう。別にそこで住むわけではなく、ただコーヒーを飲むだけなのだから。ただ屋根だけはしっかり作った方がよい。雨による浸水は、材をすぐに腐らせる。

③薪ストーブを設置する

薪ストーブは、安物(5000円くらいで買える)で十分だが、これは日常的に使っていると1~2年ほどで駄目になる。かといって、ダッチウェスト社のような立派な鋳物製はとても高い。そこでお勧めなのは、自分で作ることである。1.5~2mmくらいの板厚の鉄板を用意して(※3)、それをカットし、曲げて溶接すれば出来上がりである。溶接に多少技術が必要であるが、慣れてくれば1週間ほどで作れる。

④薪ストーブで約90℃の湯を沸かす

いよいよコーヒー淹れるときが来た。ここまでくればどんなコーヒーであろうとまずかろうはずがないが、しかしその点を差し引いてもうまいのだから心配はご無用。薪ストーブに薪を入れ、火をつけたらお湯を沸かす。この時のポイントは、完全に沸騰させる前のお湯を使うことである。100℃のお湯だと、コーヒーに雑味が出ておいしくない。そこで80~90℃くらいのお湯にする(シュンシュンという音が出てしばらくしたあたり)。多少温度が低くても、その分マイルドな味わいになるだけなので、思い切って低めの温度で入れてみると良い。温度が低すぎる場合には泡が立たないので、そこまで低いとだめである。

⑤安いコーヒー豆を準備する

豆は深入りのものにする。お勧めはUCCの「職人の珈琲・深いコクのスペシャルブレンド」(緑のパッケージ)である。だいたい300g入りで400~500円くらいであるが、300円程度で安売りしていることがある。100g100円は、市販品のコーヒーでは最安値の範疇であるが(これ以下のものは間違いなくマズイ)、この豆はその中でも一番おいしいと私は思う。ただし同じ「職人の珈琲」でも赤パッケージや青パッケージのものはお勧めしない。正直な話、マズい。酸味系が好きな人には話が違うのかもしれないが、個人的にはこれはない。

⑥カップを3つ用意する。

なぜカップが3つの必要なのかと思うかもしれない。しかし、これを怠るとおいしいコーヒーにはありつけないと思ってもらいたい。それほど重要なアイテムである。

⑦ペーパーフィルター式ドリップを乗せ、豆を2~3人分入れる

通はネルだろ、と突っ込むかもしれないが、それは面倒である。いちいち洗わねばならない。ペーパーフィルターなら、使い終わればそのままストーブにぽん!で済む。水道設備のない小屋では、水は貴重品である。
コーヒー豆(中引きもしくは細引き)は通常の2~3倍以上入れること。ここでケチってはいけない。どうせ安い豆なのだ、計量スプーンなど使わずにドバっと入れたまえ。

⑧お湯を注ぎ、20秒以上待つ(蒸らし)

この時、全体にお湯をかける必要はなく、真ん中の方にちょろっと注ぐだけである。ペーパーにはできるだけお湯がかからないようにする。

⑨お湯を注ぎ、カップ1/3~1/2まで入れる

ゆっくり少しずつ真ん中から徐々に広がるようにお湯を注いでいく。この時、できるだけお湯がペーパーにかからないように入れる。こうすると、真ん中が泡で盛り上がってくる。この盛り上がりが大きいほど上手な淹れ方である。平たくなるのは素人の証拠。やかんからお湯がドバドバ出てうまくいかないという人は、注ぎ口の細いケトルがあるので、そちらに替えると良い。

⑩二番目のカップにコーヒーを入れる

二番目のカップでは、お湯の注ぎ方はさほど重要ではない。⑨と同様でいいのであるが、面倒ならドバドバ入れても構わない。このコーヒーは並みレベルのおいしさとなる。量はお好みで。

⑪三番目のカップに少しばかりコーヒーを入れる

三番目のカップでは、もう完全に適当でよい。量もお好みで。ちなみにお湯を注いだ時の泡立ちがなくなって、水面が見えたらもうマズイコーヒーしか出てこないし、時間もかかるようになる。そうなったら、さすがにあきらめた方がよい。

⑫さあ、召し上がれ!

ようやく出来上がりである。ご苦労様。
まずは最初のカップのコーヒーを飲んでもらいたい。これまで飲んでいたものとは全然レベルが違うはずである。苦みが効いてコクが深い。かなり濃いので、それが苦手な人は「お湯」を注いで調整すべし。こうすれば上品な味のまま濃さが調整できる。

これはアイスコーヒーにしてもウマイ。アイスコーヒーの場合の作り方は湯を注ぐ前に先に大き目のカップに氷を一杯入れておくのがコツである。ドリップにお湯を注ぐと氷が解けるが、もともと濃いのでちょうどいい濃さになる。そのあと、氷を足して、お好みでガムシロップなど入れる。このウマさにはまって、私は夏の間、連日こればかり飲んでいた。

さて、人間というのものはうまいものばかり味わっていると必ず飽きてくるものである。「もう別にフツーの味でいいや」と思うはずなのである。そこで、まだコーヒーを飲みたい人は二杯目のカップを手にするとよい。並みの味にきっとホッとするだろう。気取らない、どこにでもあるコーヒー。うまいコーヒーは一杯目だけで十分なのだ。

一度に二杯もコーヒーは飲めない人は、それを醒まして冷蔵庫にでも入れておくと良い。何かスイーツでも食べたいときに、ちょうどいい感じになる。平たく言えばただ冷たくて苦いフツーのコーヒーなのだが、それがちょうどいい具合にスイーツの甘さとマッチするはずである。

三倍目のカップのコーヒーは、マズいコーヒーとして、最後に少しだけ飲んでおくことをお勧めする。人間というものは、うまさの基準を有するからこそ、ウマイ・マズイを判断できる。もし、うまいコーヒーばかり飲んでいると、基準が上がってうまいコーヒーなのにまずく感じるようになることも多々あるものだ。そこで、最後にまずいコーヒーを飲んで、自分の基準点を引き下げておくことである。こうすることで、次回もまた実にうまいコーヒーを味わうことができる。


この新しい作法ともいうべきコーヒーの味わい方を知れば、どんな喫茶店のコーヒーを飲んでも、満足できなくなることだろう。「自分の小屋で入れた方がはるかにウマイ」と間違いなく感じること請け合いである。

では、皆さんの楽しきコーヒーライフに・・・幸あらんことを!



※1)Bライファー:Bライフを実践する人のこと。Bライフとは田舎に小屋やテントを建ててお金のかからない気楽な生き方をする人の生活スタイルとでもいえようか。ネットで検索すればいくらでも出てくる。ちなみに私はBライファーではない。

※2)ベタ基礎や布基礎:家の土台は固くなければならない。それを基礎と呼ぶが基礎には種類があって、ベタ基礎、布基礎、独立基礎などがある。ベタ基礎とは文字通り土台をすべてコンクリートなどで固める方法。布基礎とは必要な部分に布を広げたようにコンクリートなどを流し込んで作った基礎。一方独立基礎とは、柱のところだけ固めた基礎のことである。小さな小屋でも立派な基礎を作る人も多いのだが、正直な話、そこまでやる必要はない。せいぜい独立基礎で十分である。小屋を解体する必要が出てきた場合、ベタ基礎や布基礎だと解体するのに手間がかかるので、むしろやめた方がよい。

※3)鉄板の板厚:5000円くらいで売っているいわゆる時計型薪ストーブは、鉄板の板厚が1mmない。これだと軽くて取り扱いは楽だが、1年もすると穴が開いてくる。一方、鋳物製の薪ストーブは高価であり(2万~100万円)、重い。そういうわけで私は廃材を使って自作した次第である。使った鉄板は1.6mmほどであるが、あまりに厚いと加工しにくくなり、かつ重くなるのでこの辺りがちょうどいいくらいか。溶接するにも何とかできるくらいの厚さである(薄い板だと溶接で穴が開いてしまう)。鉄板の曲げは、下に木材などを置いて叩いて曲げる。下に丸太を置けば、煙突状の形状も作ることができる。溶接が難しい場所には、タッピングビス・ドリルビスを使った。これだとあとで取り外すこともできるので、便利である。


散文(批評随筆小説等) 安い豆でも美味しい!コーヒーの淹れ方 Copyright パン☆どら 2019-04-11 21:57:47
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