青色吐息の彼女の日常
秋葉竹

そんな日常なんてと
彼女はいうけれど
じっさいのところ

甘いビニールの匂いがする
黄色いラバーダックが
キッチン洗い場で
逆さになって溺れている

小さな白いビー玉みたいに
勢いよく水流が
蛇口から出てきたので
慌てて蛇口をひねって止める

今日は雹が降ったから
青空もすこしけんか腰で
雲のすぐ上まで下りてきている
流されてしまった怪物の対価は
地上に届くことなく浮かんで漂っている


いずれ夜も夜でなくなる日
おだやかな風が
世界の終わりに降りしきり
搦めとられる心は
迷子の子供の泣き声の震えを帯びる

語るなら
ラブバラードに乗せて
氷の心臓を熱に変えて
だんまりを決め込む不甲斐ない怠け者
いちにちかけても

青色吐息交じりの追跡劇となる彼女の日常。

想像した光の都の街灯は
やがておもむろに消えゆく眼帯の人の
心からの優しい電話を受けて

死んでしまった、って知ったのです

それを日常的に経験して
そんなものなのだと思うと
裏山にも
日々散歩する川沿いの遊歩道にも

春の花が咲き始め
風の音が午後の日射しとともに輝くと
立ち止まってみている
あなたの顔までしっかりと
見つめていないと
溶けてしまいそうだ

世界には他人はいないという幻想と共に、
幸福にするという空虚な星々の約束は
光の都に振りしきるから。

光の粒の幸福を集める優しげな仕草も
わけのわからない、
奇跡を起こす手段の反復でしかない。

「そんな日常……」と
青色吐息の彼女は言うけれど─────










自由詩 青色吐息の彼女の日常 Copyright 秋葉竹 2019-03-17 14:53:24
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