散文と詩文の間
こたきひろし

いつも閑散としているガソリンスタンドの横からその路地に入る。道巾は車1台しか走れないスペースで一方向にしか走れない。両側に貧相な佇まいが軒を連ねているが、途中には産院と歯科医院があってその狭い駐車場が口を開いていた。

夫婦は夕方車で食材を買いにいく。その路地を通り抜けて先の道に出ると間もなく周辺で一番の安売りスーパーマーケットがある。自宅から十分もかからない距離だ。
路地の途中にある産院は妻が二人の娘を出産した場所だ。そして歯科医院は以前夫婦が一緒に治療した所だった。
思いでがある。思い入れもあった。
産院の前に来る度にそこの看護婦の不親切な態度がよみがえってくるし、歯科医院を通り過ぎると受け付けの愛想のいい若い女性の顔が思い浮かぶ。

私は妻がありながら、頭のなかは他所の女で充満しているのだ。
しかし行動は何も起こさない。起こせないのだ。
眺めてあらぬ妄想に更けるだけ。
ただの欲求不満の妄想に更けるだけ。

十歳年下の妻は肉親より繋がりが重くなり、時には鎖になって絡まる。
それ相応の結婚の歳月が歴史がそうさせるのだろう。

人生にも路地が有るなら、今は二人でそこを歩いているのかもしれない。


自由詩 散文と詩文の間 Copyright こたきひろし 2019-03-17 09:28:06
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