オレンジビーチ
野田詠月

彼らが護ろうとしたものを
亦、犠牲によって勝ち得た繁栄を
ないがしろにしてきた
神罰仏罰のような現実の悪夢から
逃れ逃れて僕は
悲しみのように美しい海を求めて
南へ行く飛行機に乗った

しかし、逃れたはずの僕は
寡黙なこの島の歴史の前に裸にされた
それは清涼な風吹くオレンジビーチにいても同じことで
砂浜に腰を下ろして、
目を細めて、
ラグーン越しの外国船を見ていると
今にも僕に向かって一掃射撃を始めてきそうで
背中に激しい戦慄が走り、
青ざめた血液は逆流をはじめ、
身動きが取れなくなり、
凶弾が体を貫通すると
身は屍になってすぐに崩れ落ちる
そして、僕の中では戦争なんかは一瞬で終わる

それは僕が平和を病んでいるからなのだ
お粗末過ぎる憐憫と
シンクロすらままならぬ感受性

でも、僕はそれでいいと思う
「愛と平和で何が悪い?」と思う

「戦争は厭だ」
「銀シャリとお豆腐のおみをつけと海老のてんぷらが食いたい」
「もう一度雪が見たい」
「もう一度、あのひとの白肌に重なりたい」
と思いながらも口にできず、
このオレンジビーチに朽ちていった英霊たちの分まで

「愛と平和で何が悪い?」



平成二十三年三月二十二日
パラオ共和国ぺリュリュー島オレンジビーチにて詠む


自由詩 オレンジビーチ Copyright 野田詠月 2019-03-17 08:53:23縦
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