ひかり 迷う手
木立 悟





遠い遠い
遠い振動
真四角な
ひびき


降りて来そうで来ない手が
曇のすぐ下を漂っている
何も無いところから生まれ
流されることなく浮かんでいる


雨音が止み
夜は夜になる
涼やかな波が
径をひたす


舌先を熱に変え
硝子の花を鏡に敷き詰め
ただまばゆさをまばゆさに
暗がりを暗がりに分け与える
常にまだらな吐息のために


灯は手招き 誘い
消えてゆく
端が凍った光の櫛
土に落ちてはかたちを失くす


雲の生きもの
午後のひとり
歩み立ちどまる かがやく顔
たたずむ顔


雪が融け
雪を描いた絵が現われ
光の粒の幸福を集め
次の冬まで目を閉じてゆく
























自由詩 ひかり 迷う手 Copyright 木立 悟 2019-03-03 21:43:42
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