こらえる犬
秋葉竹


小さな神様は二人いて、一度現れて
そして影となり、二度と現れなくなった



とてもむかしから飼っている犬がいる
夜は犬小屋で静かにしている

死んだような影を落として
鳴き声をこらえている

さいきんでは遠吠えを忘れたようだ

もう、長くないのかもしれなかった

水の無い川があった

是山橋の上から
薄日さす河原を眺めた

犬は飼い主を探して
転げまわるように運命に操られていた

ほんとうに大切なことは
すべて犬から教えてもらったけれど

けれど

犬が言葉を喋るわけもない
こともないにしても、
尾っぽをヒラヒラと振りたくり
丸い目をして伝えたかったのは
ただ新しい冒険に出よう。
そんなことより
魅力的な影がある、
のが真実だとしても。


二人の少年の笑顔も泣き顔も期待どおりだとしても




小さな神様は二人いて、一度現れて
そして影となり、二度と現れなくなった




自由詩 こらえる犬 Copyright 秋葉竹 2019-02-28 23:49:53
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