貧者の踊り
ただのみきや

失うことここで
そう喪失を得て
3と7の鬩ぎ合い昼と夜の
揺らめく結び目シルクのワルツに不規則な鞭を入れる
朝顔たちの禁欲の裂け目から
積み重ねた箱の中の比喩は脚の多い生き物がマネキンの
頭の中を静かに移動するサラサラとだがどこか淫靡で
隠し続けたものに毒され歪んで往く顔につけられた麗句
東から野性馬の群れが押し寄せて残像を追い散らし
入子状の時間を踏み砕き青い湖を鼓膜のように鳴らし
空を仰ぐ兵士たちの額がふっと消えて往く
否定と肯定の宝石が降り注ぐ
神々のスロットマシーンが壊れたかのように
答は問で問が答
箱の中は箱どこまでも
シチュー鍋の中の兎は生きたまま前足を出し
森の中で男はすでに死んでいる
恋も罰も雷に打たれる
現象を解釈するなら迷信は科学より楽しい
蝶々を咥えて死体は鳴かぬと
鳴く鳥がいる
左目の奥に月が刺さっている




                 《貧者の踊り:2019年2月17日》









自由詩 貧者の踊り Copyright ただのみきや 2019-02-17 18:06:04縦
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